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■ PHOTO GALLERY SAI その存在理由について

2009年9月、町家を改装して開廊したPHOTO GALLERY SAI。

《SAI》とは、漢字学者である白川静が発見した「∪」に由来する。かつて人は意思疎通のため言語のみを用いてきた。しかし、物質的な存在を超越する神に対して祈るにあたり言語ではない伝達ツールが必要となった。それが文字であり、その痕跡は甲骨文字として後世に残された。その中に現在は「口」と表記されている「∪」という文字があった。白川によれば、「∪」とは神へ伝えるべき祝詞を中に入れて神前に捧げた『器』を表すという。

PHOTO GALLERY SAIは『器』であることを願う。ここに置かれる写真は器に入れた祈りへの供貢である。命の基底には存在しながらも不可視であり、それゆえ不可触知な世界が広がっている。それを可触知となす媒体のひとつが写真ではなかろうか。写真は、人が創り出すものではあるけれども物質となった瞬間からすでに供貢としてこの世界に帰属するべき存在となる。それは創造主の手を離れた生命と同義である。

写真はディスプレイに映し出されるものではなく、物質として存在するべきものである。ゆえにPHOTO GALLERY SAIはオリジナルプリントを重視した活動を展開することを趣旨とする。写真を所有するということは、創造者である写真家が「可触知とした世界」を手に入れることであり、それは祈りの共有に似ている。潜在意識に語りかける何かとの出会いは、意識下の自己との対話を生みだす。一枚の写真に魅かれてしまうという意識とそこに存在する理由を感知する無意識が邂逅する空間、それがPHOTO GALLERY SAIの存在理由である。

 

      


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